正規のカイロプラクティック教育とは

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竹谷内啓介東京カイロプラクティック院長
日本カイロプラクターズ協会会員
RMIT大学健康科学部カイロプラクティック学科卒業。国際カイロプラクティック試験委員会顧問、日本カイロプラクターズ協会(JAC)会長、世界カイロプラクティック連合(WFC)理事を歴任し、現在は日本カイロプラクターズ協会顧問として、国際標準のカイロプラクティック教育や臨床の普及および日本カイロプラクティック科学学会での研究事業に携わる。主な共訳:カイロプラクティックの安全性と教育に関するWHOガイドライン(世界保健機関)、カイロプラクティックテクニック総覧(エンタプライズ)、脊椎のリハビリテーション(エンタプライズ)など。
正規のカイロプラクティック
国際的に正規と認められるカイロプラクティック教育は、大学レベル(通常4~6年)の基礎医学・臨床医学を含む教育課程です。最低4,200時間以上の教育時間であり、米国では医学教育の平均時間が4,800時間である一方で、カイロプラクティック教育の平均時間が4,620時間です。これは世界保健機関(WHO)が提示するカイロプラクティックの基礎教育と安全性に関するガイドラインに基づいており、卒業後に国家資格を取得して専門職として臨床に従事します。米国をはじめとする多くの国では国家資格または州資格としてカイロプラクター(DC:ドクター・オブ・カイロプラクティック)の職業が認知されています。北米・ヨーロッパ・オセアニア諸国では、カイロプラクターは医師や歯科医師、看護師、薬剤師、理学療法士と並ぶ医療専門職(Healthcare Professionals)として制度化されています。

一方、日本では国家資格制度が存在せず、法的な整備もありません。そのため、教育内容や修了者のレベルは提供団体ごとに大きく異なる状態が続いています。結果として「誰でもカイロプラクターを名乗れる」という現状が生まれ、職業全体の信用にも影響しています。
日本に正規教育が普及しなかった理由
なぜ日本ではこのような正規教育が根付かなかったのでしょうか。最大の要因は、長年の法制度の不在です。日本では、カイロプラクティックが1916年に伝来して以来、一時期存在した神奈川県の条例を除いて、カイロプラクターの職業が国家資格として制度化されておらず、教育制度も国が整備していません。結果として、厚生労働省が資格制度を認めていない現状では、文部科学省も大学教育を認めることができない状況が続いています。法律による明確な資格制度がないため、施術者の教育レベルや安全性、臨床判断能力も統一されず、日本でカイロプラクターに対する誤解が広がりました。その空白を埋める形で登場したのが、国内で増えている私塾的な短期講座・セミナー、ビジネス主導型スクールです。これらの多くは、国際基準の教育とは内容・時間・臨床実習のいずれも大きく異なりますが、「カイロプラクティック」「海外」「大学」「WHO基準」といった言葉だけが一人歩きし、一般の人々には違いが分かりにくくなってしまいました。
カイロプラクターの職業に対する誤解
上記に挙げたカイロプラクティック教育の混乱は、職業のイメージにも直接影響しています。正規のカイロプラクティック教育を履修したカイロプラクターは「専門職(Profession)」として総合的な臨床能力を訓練されていますが、一方で数日から数ヵ月の短期講習のみで名乗っているカイロプラクターは専門的な臨床能力を学ぶことはなく、数ある「施術法(Technique)」のひとつとしてその手順を学んでいます。
これらの二つの種類のカイロプラクターが同じ名称で混在してしまうことで、「科学的根拠がない」「疑似科学である」「危険である」「怪しい療法」といった評価が、業界全体に向けられる状況が生まれました。本来の国際的な基準に準拠するカイロプラクターは、世界カイロプラクティック連合(WFC)が掲げるように、患者安全を最優先し、科学的根拠(エビデンス)に基づく臨床を行い、患者中心の多職種連携を重視するヘルスケア専門職です。しかし日本では、「教育の質の差」が整理されないまま放置されてきたため、職業そのものが誤解され続けてきました。
業界の現状改善のために必要なこと
この状況を改善するために必要なのは、正規教育とは何かを明確に示すことであり、WHO指針に準拠する国際基準とそうでない教育の違いを国民に分かり易く説明することが求められています。また段階的に、民間のカイロプラクター登録認証制度を整備して、将来的に公的制度へ格上げさせていく必要があります。
これらを通じて、日本におけるカイロプラクティックは、「よく分からない民間療法」から「国際的に確立された医療専門職」へと発展していくことが望ましいと考えています。また正規のカイロプラクティック教育が必要な最大の理由としては、「患者安全」であり、国民の健康と安全を守ることにもつながります。
臨床カイロプラクティックプログラム
こうした日本国内の教育の混乱を是正し、WHO基準の知識・技術教育をコンバージョン教育で提供する試みの一つが、日本カイロプラクターズ協会(JAC)による「臨床カイロプラクティックプログラム」です。このプログラムは、すでに国内のカイロプラクティック専門校を修了し、臨床経験のある施術者向けに提供される教育プログラムであり、WHOが示す教育基準のカテゴリーII(B)に基づくコンバージョン教育(すでに臨床を行っている人のための教育)として位置づけられています。WHOガイドラインに準拠した教育内容であり、日本カイロプラクティック登録機構(JCR)登録試験の受験資格につながります。本プログラムは、東京カレッジオブカイロプラクティック(国際認証校)が運営してコンバージョン教育プログラムを日本カイロプラクターズ協会(JAC)が継承したもので、日本国内における唯一のWHO基準コンバージョン教育の取り組みとして注目されています。
臨床カイロプラクティックプログラム (日本カイロプラクターズ協会が実施する通信教育)





