正確なカイロプラクティックの情報収集

- 執筆者
-
竹谷内啓介東京カイロプラクティック院長
日本カイロプラクターズ協会会員
RMIT大学健康科学部カイロプラクティック学科卒業。国際カイロプラクティック試験委員会顧問、日本カイロプラクターズ協会(JAC)会長、世界カイロプラクティック連合(WFC)理事を歴任し、現在は日本カイロプラクターズ協会顧問として、国際標準のカイロプラクティック教育や臨床の普及および日本カイロプラクティック科学学会での研究事業に携わる。主な共訳:カイロプラクティックの安全性と教育に関するWHOガイドライン(世界保健機関)、カイロプラクティックテクニック総覧(エンタプライズ)、脊椎のリハビリテーション(エンタプライズ)など。

カイロプラクティックについて調べる
「カイロプラクティック」について調べる際には、どのように情報収集を行うかが重要です。情報源は大きく「一次情報」と「二次情報」に分けられます。それぞれ以下の通りです。
一次情報に含まれるもの
- 研究論文や各国の調査(国内外の研究や調査)
- 公的団体や専門団体のデータ(政府や業界団体の調査報告)
- 実際の体験や臨床現場の声(患者やカイロプラクターの立場で体験)
二次情報にふくまれるもの
- 新聞や雑誌の記事(マスコミの取材記事)
- インターネット上のまとめサイト(SNSやウェブサイトなどの記事)
- 市場調査会社のレポート
- 体験談やブログ記事(患者や関係者のブログ記事やメディア記事)
一般的に、一次情報の方が二次情報よりも独自性や信頼性が高いといえます。二次情報は執筆者の解釈や編集が加わるため、元の情報とは異なった内容になったり、情報源や媒体が誤っていたりする可能性もあるため、注意が必要です。それでは、これらの情報収集方法について順にご説明します。
カイロプラクティックの情報収集方法
1. 研究論文(一次情報)
大学や研究機関が発表する論文や、各国の保健省が行った調査は、もっとも信頼できる情報源のひとつです。例えば、腰痛に対する治療効果や、安全性に関する研究は、国際的に数多く報告されています。専門的な内容も多いですが、確かな根拠に基づいた情報が得られる点が大きな強みです。しかし、厚生労働省による「脊椎原性疾患の施術に関する医学的研究」(通称 三浦レポート)など、30年以上前の非科学的な手法を用いた調査報告書が、いまだに政府の見解として残っている例もあります。
- カイロプラクティック(米国NCCIH)
- カイロプラクティック(英国NHS)
- カイロプラクティック(オーストラリアAHPA)
- カイロプラクティック(厚生労働省eJIM) ※NCCIH情報の翻訳
- JMPT誌
- C&MT誌
1. 各国の調査(一次情報)
日本カイロプラクティック科学学会のホームページで以下の調査が掲載されています。
- ニュージーランド(1979):ニュージーランドレポート カイロプラクティック調査委員会【有効性認める】
- オーストラリア(1984):オーストラリア厚生省 メディケア受益検討委員会【有効性認める】
- スウェーデン(1987):スウェーデン 代替医療委員会報告書【有効性認める】
- アメリカ(1991):ランド研究所 腰痛に対する脊椎マニピュレーションの妥当性 和訳【有効性認める】
- 日本(1991):旧厚生省・脊椎原性疾患の施術に関する医学的研究(三浦レポート)【有効性認めず】
- カナダ(1993):オンタリオ州政府 マンガレポート【有効性認める】
- イギリス(1993):英国王室基金 ビングハムレポート【有効性認める】
- アメリカ(1994):米連邦政府ヘルスケア対策研究局 成人における急性腰痛の諸問題腰痛ガイドライン【有効性認める】
- イギリス(1994):英国政府 腰痛の臨床業務ガイドライン 腰痛ガイドライン【有効性認める】
- カナダ(1995):ケベック州 むち打ち関連疾患に関する調査【有効性認める】
- イギリス(2004):英国腰痛運動とマニピュレーションの無作為試験【有効性認める】
- 欧州(2004):慢性非特異的腰痛管理 ヨーロピアンガイドライン【有効性認める】
- アメリカ(2007):米国内科学会および 米国疼痛学会による 統合臨床診療ガイドライン【有効性認める】
- イギリス(2009):NICE(英国国立臨床評価機構)ガイドライン 成人の腰痛に対する初期のマネジメント【有効性認める】
- イギリス(2011):BMA(英国医師会)腰痛・頚部痛 ガイド【有効性認める】
- アメリカ(2012):急性と亜急性の頚痛に対する脊椎マニピュレーション、薬物治療、在宅運動指導の比較【有効性認める】
- アメリカ(2017):急性・亜急性・慢性の腰痛に対する保存療法の診療ガイドライン【有効性認める】
- 日本(2019):腰痛診療ガイドライン 改訂第2版 2019【有効性認めず】
2. 公的団体や専門団体のデータ(一次情報)
世界保健機関(WHO)や世界カイロプラクティック連合(WFC)、各国のカイロプラクティック協会などが公表する統計や報告書も有用です。これらは業界全体の傾向や国際的な基準を知るのに役立ちます。
- カイロプラクティックの基礎教育と安全性に関するWHOガイドライン
- プライマリケアおよびコミュニティケアにおける成人の一次性慢性腰痛に対する非外科的マネジメントのWHOガイドライン
- 世界カイロプラクティック連合(WFC)
- 米国カイロプラクティック協会(ACA)
- カナダカイロプラクティック協会(CCA)
- 豪州カイロプラクターズ協会(ACA)
- 英国カイロプラクティック協会(BCA)
- 日本カイロプラクターズ協会(JAC)
3. 実際の体験や臨床現場の声(一次情報)
治療を受けた患者さんの体験談や、臨床に携わるカイロプラクターの声も貴重です。科学的データとは異なりますが、実際の感覚や利用者の満足度を知る手がかりになります。
4. 新聞・雑誌の記事(二次情報)
新聞や専門誌は、一般読者にもわかりやすく編集されているため、情報を手軽に得たいときに便利です。ただし、記事の角度や記者の解釈によって内容が変わる場合があるので、必ず情報源を確認する姿勢が大切です。
5. インターネット上のまとめサイトや解説記事(二次情報)
「カイロプラクティックとは?」と検索すると、多くのまとめサイトが出てきます。基礎知識を把握するのには役立ちますが、出典が明示されていない場合もあるため、正確性には注意が必要です。いくつかの大学でカイロプラクティックについての解説記事を掲載しています。
- ハーバード大学医学大学院 “Chiropractic care for pain relief“
- ハーバード大学医学大学院 “Should you see a chiropractor for low back pain?“
- UCLA 患者教育ビデオ
6. 市場調査会社のレポート(二次情報)
カイロプラクティック市場の規模や利用者動向を知るのに有効です。業界の将来性や経済的な視点から分析されているため、ビジネス関係者には参考になります。
7. 体験談やブログ記事(二次情報)
個人の体験談やブログ記事はリアルな声として興味深い一方で、主観的な感想に偏る傾向があります。読み物としては価値がありますが、医学的根拠とは切り離して考える必要があります。





