カイロプラクティックのエビデンス【安全性】

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竹谷内啓介東京カイロプラクティック院長
日本カイロプラクターズ協会会員
RMIT大学健康科学部カイロプラクティック学科卒業。国際カイロプラクティック試験委員会顧問、日本カイロプラクターズ協会(JAC)会長、世界カイロプラクティック連合(WFC)理事を歴任し、現在は日本カイロプラクターズ協会顧問として、国際標準のカイロプラクティック教育や臨床の普及および日本カイロプラクティック科学学会での研究事業に携わる。主な共訳:カイロプラクティックの安全性と教育に関するWHOガイドライン(世界保健機関)、カイロプラクティックテクニック総覧(エンタプライズ)、脊椎のリハビリテーション(エンタプライズ)など。
カイロプラクティック治療、特に脊椎マニピュレーション(アジャストメント)には高い安全性が認められています。主要なレビューでは、軽度の副作用は比較的多いものの、深刻な有害事象は稀であると結論づけています。例えば、2023年に実施された約100万件のカイロプラクティック治療を対象とした大規模研究では、重篤な有害事象の発生率は約476,000件に1件であり、脳卒中や馬尾症候群の症例は確認されませんでした。
日本国内の医学関連学会誌では、カイロプラクティック治療やその他の手技療法の後に頚動脈解離が発症した症例が報告されることがあります。しかし、国内ではこのような有害事象に関する大規模研究は存在していません。現時点で得られている海外の複数の研究に基づく最良のエビデンスによれば、カイロプラクティック治療で用いられる脊椎マニピュレーションが、動脈解離を引き起こすほどの機械的ストレス(物理的刺激)を動脈に与えることはないとされています。
頚動脈解離は脳卒中全体の中では比較的まれであり、発症率もきわめて低いとされています。また頸動脈解離の初期症状(頚部痛や頭痛)は、日常的にみられる非特異的頚部痛(機械的頚部痛)と類似していることが多く、米国では、症状発生前に医師(総合診療医)やカイロプラクターを受診している可能性が高いと報告されています。日本国内においても、カイロプラクティック治療の際には、安全で質の高いエビデンスに基づいた患者中心のケアを提供することが重要です。
椎骨脳底動脈の脳卒中リスクとカイロプラクティック治療
集団ベース症例対照研究および症例クロスオーバー研究の結果
Cassidy JD, Boyle E, Côté P, He Y, Hogg-Johnson S, Silver FL, Bondy SJ
椎骨脳底動脈(VBA)の脳卒中は極めて稀な事象である。カイロプラクティックおよび総合診療医の受診に伴うVBA脳卒中のリスク増加は、椎骨脳底動脈解離による頭痛や頸部痛を有する患者が脳卒中発症前に治療を求めたことによる可能性が高い。カイロプラクティックケアとプライマリケアを比較した場合、椎骨脳底動脈の脳卒中リスクの過剰増加を示す証拠は認められなかった。
脊椎手技療法における頸動脈解離の除外に向けたリスク・ベネフィット評価戦略:包括的レビュー
Chaibi A, Russell MB
物理的な血管スクリーニング検査が存在しない状況では、手技療法専門家は「害をなさない」原則に従うため、詳細な病歴聴取と臨床推論に依拠する必要がある。
カイロプラクティックは1900年代初頭に芸術・哲学・科学として発展したが、頸部マニピュレーションは武術の真似事であってはならない。従って頸部マニピュレーションテクニックを実施する際には、単一の脊椎分節をマニピュレーションする際に特定性を保ち、頸部技術(特に回旋技術)における可動域限界を最小化し、力を最小限に抑えることが重要である。
カイロプラクティック治療と頸動脈解離に関する系統的レビューとメタ分析:因果関係の証拠なし
Church EW, Sieg EP, Zalatimo O, Hussain NS, Glantz M, Harbaugh RE
系統的レビューにより、カイロプラクティックマニピュレーションと頚動脈解離(CAD)の関係に関する文献の質が非常に低いことが明らかになった。入手可能なデータのメタ分析では、カイロプラクティック頸部マニピュレーションと頸動脈解離の間にわずかな関連性が示された。既存研究においてバイアスや交絡要因のリスクが相当程度存在することを明らかにし、頸部痛が、頸動脈解離およびカイロプラクティックマニピュレーションの両方と関連していることが知られている点は、マニピュレーションと頚動脈解離の関連性を説明する可能性がある。因果関係を支持する確固たる証拠はなく、根拠のない因果関係の信念は深刻な結果を招く恐れがある。
カイロプラクティック治療と椎骨脳底動脈系脳卒中のリスク:米国民間保険加入者およびメディケア・アドバンテージ加入者を対象とした症例対照研究の結果
Kosloff TM, Elton D, Tao J, Bannister WM
カイロプラクティック治療への曝露とVBA脳卒中のリスクとの間に有意な関連性は認められなかった。したがって、手技療法がVBA脳卒中の原因である可能性は低いと結論付ける。プライマリケア医受診とVBA脳卒中の正の関連性は、動脈解離の症状(頭痛および頸部痛)に対する治療を求める患者の意思決定に起因する可能性が最も高い。さらに、カイロプラクティック受診を操作への曝露指標として用いることは、VBA脳卒中発生との関連性の強さの推定を信頼できないものにする可能性があるとも結論づける。
頸動脈解離の危険因子に関する系統的レビュー
A systematic review of the risk factors for cervical artery dissection
Rubinstein SM, Peerdeman SM, van Tulder MW, Riphagen I, Haldeman S
頸動脈解離は多因子性疾患であり、検討対象となった研究の多くは、症例対照研究で一般的に見られる2つ以上の主要なバイアス要因を含んでいた。アテローム性動脈硬化症と頸動脈解離の関係は十分に検討されていない。
メディケアパートBの加入者における66歳から99歳の高齢者を対象としたカイロプラクティック脊椎マニピュレーションに伴う外傷性損傷のリスク
Whedon JM, Mackenzie TA, Phillips RB, Lurie JD
神経筋骨格系の問題による外来受診リスクを有する66~99歳のメディケア受給者において、カイロプラクティック外来を受診した被験者は、総合診療医(プライマリケア医)を受診した被験者と比較して、7日以内に頭部・頸部・体幹の損傷リスクが発症する確率が76%低かった。
カイロプラクティック脊椎マニピュレーション療法受療者における重篤な有害事象発生率の後ろ向き解析
Chu, E.CP., Trager, R.J., Lee, L.YK, Niazi, I.K.
脊椎マニピュレーション療法(SMT)に関連して発生する可能性のある重篤な有害事象は稀であり、施術10万回あたり0.21件の発生率であった。生命を脅かすものや死亡に至った有害事象は確認されなかった。
カイロプラクティックの安全性に関する事実
Chiropractic Safety: The Facts
英国カイロプラクティック協会(BCA)





