世界のカイロプラクティック事情【米国】

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竹谷内啓介東京カイロプラクティック院長
日本カイロプラクターズ協会会員
RMIT大学健康科学部カイロプラクティック学科卒業。国際カイロプラクティック試験委員会顧問、日本カイロプラクターズ協会(JAC)会長、世界カイロプラクティック連合(WFC)理事を歴任し、現在は日本カイロプラクターズ協会顧問として、国際標準のカイロプラクティック教育や臨床の普及および日本カイロプラクティック科学学会での研究事業に携わる。主な共訳:カイロプラクティックの安全性と教育に関するWHOガイドライン(世界保健機関)、カイロプラクティックテクニック総覧(エンタプライズ)、脊椎のリハビリテーション(エンタプライズ)など。
カイロプラクティックの発祥国である米国では、カイロプラクターの法的資格(免許)が全州で認められており、補完医療(現代医療/西洋医学を補完する医療)の分野に位置づけられています。1895年にD.D.パーマーによってカイロプラクティックが創始され、1897年には民間療法としての教育が開始されました。その後、教育水準の向上とともに発展を遂げ、現在では第一専門職学位であるDC(ドクター・オブ・カイロプラクティック)が授与される大学教育として提供されています。1915年にはノースダコタ州で全米初の法制化が行われ、1974年にはルイジアナ州で全米最後の法制化が達成されました。また、アメリカ国立衛生研究所(NIH)傘下の国立補完統合衛生センター(NCCIH)によると、カイロプラクティックは主に手技による脊椎マニピュレーションを用い、身体の自然治癒力に焦点を当てた医療専門職であると定義されています。
カイロプラクティック:米国国立補完統合衛生センター(NCCIH)
資格制度
米国では、カイロプラクターは各州(50州および首都ワシントンD.C.)ごとに免許を取得する必要があります。
カイロプラクター免許取得までの一般的な流れは、以下のとおりです。
- 米国カイロプラクティック教育審議会(CCE)に認可された教育機関(大学)を卒業する
- 全米カイロプラクティック試験委員会(NBCE)の全米統一試験および各州の開業試験に合格する
- 各州のカイロプラクター免許を取得する
臨床の業務範囲や名称独占の規定は州によって異なります。一例としてオレゴン州では、他州では制限されている一部の小規模な外科処置も認められています。また、Chiropractic Physician(カイロプラクティック医師)という名称の使用が許可されている州もあります。免許取得後も、継続教育を通じて一定の単位を取得し、免許を更新することが義務付けられています。このように、アメリカにおけるカイロプラクターは「誰でも名乗れる職業」ではなく、法律に基づいて規定されたプライマリケアの医療専門職として位置づけられています。
- California Board of Chiropractic Examiners カリフォルニア州
- New York State Board for Chiropractors ニューヨーク州
- Oregon Board of Chiropractic Examiners オレゴン州
教育制度
米国でカイロプラクターになるには、米国カイロプラクティック教育審議会(CCE)の認証を受けた専門職教育課程(4年間)を修了する必要があります。入学前に大学卒業相当(4年間)の基礎教育を履修していることが条件となります。卒業時には、第一専門職学位であるドクター・オブ・カイロプラクティック(DC)が授与されます。代表的な教育機関は以下です。
Palmer College of Chiropractic
National University of Health Sciences
Southern California University of Health Sciences
Northwestern Health Sciences University
Parker University
4年間のカリキュラムには解剖学、生理学、病理学、神経学、整形外科学といった医学系科目から、放射線診断学、カイロプラクティック臨床実習までが含まれます。現在、全米に20校ある総合大学(University)または単科大学(College)においてカイロプラクティック教育が提供されています。学生は、在学中または卒業後に全米カイロプラクティック試験委員会(NBCE)が実施する全米統一試験(Part I〜IV、理学療法試験等)を受験し、各州の免許取得を目指します。
米国カイロプラクティック教育審議会(CCE)
全米カイロプラクティック試験委員会(NBCE)
医療制度
米国には日本のような国民皆保険制度はなく、多くの国民は民間の医療保険に加入しています。主要な公的保険としては、65歳以上を対象とした「メディケア(Medicare)」と、低所得者層向けの「メディケイド(Medicaid)」が挙げられます。
カイロプラクターの業務範囲が州法によって定められているのと同様に、保険が適用される治療範囲も州ごとに異なります。さらに加入している保険の種類やプランによっても補償内容は大きく変わります。なお、公的保険であるメディケアやメディケイドにおいても、州によっては一定の条件下で一部の費用がカバーされています。また、労働災害保険、自動車保険、退役軍人保険などでもカバーされています。
業界事情
米国には7万人以上のカイロプラクターがいるとされています。これは、総人口の約3.34億人(2025年推計)に対し、約4,800人に1人の割合です。米国は、生涯で一度はケアを経験したことがある人が一定数にのぼるなど、世界的に見てもカイロプラクティックが最も普及している国の一つです。また、スポーツ大国としての側面も強く、プロリーグ(NFL、NBA、MLB、MLSなど)やオリンピック・パラリンピックの医療スタッフとしてカイロプラクターが帯同するケースも数多く見られます。
全米規模の業界団体としては、最大規模の米国カイロプラクティック協会(ACA)と、国際カイロプラクターズ協会(ICA)の2つが代表的です。ただし、多くの米国人カイロプラクターは、これら全米規模の団体よりも、むしろ自身が活動する各州の業界団体に所属して活動しているのが実態です。
米国カイロプラクティック協会(ACA)
国際カイロプラクターズ協会(ICA)





